マーケティングリサーチ
何かを売る際、肝となるのがマーケティング。そのマーケティング戦略を組み立てるうえで必須となるのが調査です。
特に、新規商材を扱うときに「誰に、どうやって売ったら効率よく売れるのか」という課題が生まれます。
市場が大きい必需品については、少し尖った商品を出しても、母数が多いので、どこかに引っかかる可能性はありますが、なくても生活に支障のないものや高単価商材等の必欲品≒嗜好品的なものについては、しっかりとターゲットと訴求を設定しなければ、”全く売れない”という事になりかねません。
P&Gのマーケティングをベースとし、大手メーカーでのマーケティング10年以上+自社商品のマーケティング経験で培った調査手法をご紹介します。
せっかく拘ってものづくりをしても、売れなければ意味がありません。
内部・外部ともに意思決定の軸はお客様の意見。なんと言ってもまずは調査。マーケティングの一丁目一番地、高効率に商品を売るためのマーケティングリサーチスキルを身に着けましょう。
調査手順
手順は下記のとおりです。
①試作品を準備
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②コンセプトシート作成
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③定性調査:デプス調査・CLT調査・ビルパネ等
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④コンセプトシート修正
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⑤定量調査:WEB調査
すでに発売済み商品のマイナーチェンジや、商品特性上ターゲットやコンセプトがある程度決まっているものについては定性調査を省くこともよくあります。(その場合は②⑤のみ)
定性調査(質的調査)
定性調査とは、定性的な商品の外観や機能、価格に対する意見等を直接インタビュー形式で聞き出す調査です。
商品のプロトタイプ(試作品)が用意できたら、コンセプトを伝えつつ実際に現物を見てもらいます。
1対1の場合や、グループで行うこともできます。日本人は他人に影響されやすいので、時間やコストに余裕があれば1対1の方がよいですが、グループですることによって意見が活発になるという面もありますので、組み合わせたりすることもあります。(モニターへの報酬は負担度によって変動しますが、5千円~1万円程度が多いです)
どの訴求が響くか、商品のどの部分が気に入ったか、もしくは気に入らないか等を直接会話することで、深く話を聞くことができるのが特徴です。
目的:商品の細かいフィードバックや、訴求の糸口(商品がどう悩みを解決できるのか)等を聞き出し、定量調査を行うに向けて仮説(ターゲット・訴求・施策)の構築・確度を上げる
手法①:調査会社に依頼
モニターの質を考慮すると、大手調査会社へ依頼するのが一番リスクをおさえられます。
「よくわからないけど安い」みたいなところに依頼すると、調査会社の人の知り合いを連れてきたりとか、雑なリクルーティングがあるようです。わたし自身はインテージを利用することが多いです。
調査会社に依頼すると、しっかりエスカレーションしてもらえるので、基本的には言われたとおりに対応すれば問題ないですが、流されてこちらの目的を見失わないように気をつけないといけません。
調査会社依頼調査の注意点はこちら
・回答を誘導しない
・可能であれば第三者がモデレーターを務める
「想定ターゲット以外にも調査する」
調査を実施すると、想定が大きく狂うこともあります。定性調査の段階では、ターゲットが誰で、どんなニーズがあるかという仮説の確度は非常に低く、仮説が違った際にまたモニターのリクルーティングをして、会場をおさえて・・・とやっていると時間がかかるので、少しターゲットを広めに調査をすると効率的です。
「回答を誘導しない」
回答を誘導しないというのは、「〇〇ですよね?」といったように、共感させたり、メーカー側の仮説に合うように持っていくことで本来のニーズを聞き出せなくなることを防ぐ必要があります。(意外とやりがちです)
「可能であれば第三者がモデレーターを務める」
モニターの本音を引き出すために、調査を進める司会(モデレーター)は第三者である(と見せかける)のが重要です。
調査会社によっては、商品の細かい質問に対応できるようにメーカー担当者から直接話をさせる場合や、予算の都合で直接対応する必要が生まれる場合もありますが、調査結果に忖度が生まれないよう、メーカーの人間であることは名乗らず、あくまで「調査会社の人」になりきって進める必要があります。
(わたしも過去に誘導された定性調査結果をもとに量的調査を実施して失敗し、500万円規模の調査をやり直した経験があります、、)
手法②:社内(または身の周りの知人等)で実施
納期やコストを考慮したときに、どうしても調査会社に依頼できない場合は、社内や身の周りに声をかけて実施することも可能です。
(ターゲットがある程度明確な場合は、趣味嗜好や属性がわかっている人に聞いてもOKということです。)
ターゲットが全く掴めていないような場合にはお勧めできません。
社内で実施する調査を別名で”ビルパネ”とも呼びます。ビル(会社)内でパネル(モニター)を探す、という意味でしょう。
実施内容は大きく変わりませんが、こちらも注意点があります。
社内(身の周り)調査の注意点はこちら
・回答を誘導しない
・可能であれば第三者がモデレーターを務める
・報酬の代わりにギフトを用意する
「ターゲット想定に近いモニターを設定する」
前述したとおり、ターゲット想定の確度が高い場合に社内や身の周りにターゲットが存在しているのならば、ビルパネを実施する選択肢が生まれるので、勿論、モニターはターゲット想定に近い人を選ばないといけません。
「回答を誘導しない」*手法①と同様
回答を誘導しないというのは、「〇〇ですよね?」といったように、共感させたり、メーカー側の仮説に合うように持っていくことで本来のニーズを聞き出せなくなることを防ぐ必要があります。(意外とやりがちです)
「可能であれば第三者がモデレーターを務める」
モニターの本音を引き出すために、調査を進める司会(モデレーター)は第三者であるとベターです。(できれば調査会社に依頼し、難しければモニターとあまり親しくない人に依頼)
プライベートな内容を聞くことになることもあるので、一緒に仕事をしていたり、関係のある人だと調査しづらくなってしまいます。逆の立場で考えるとイメージできます。(職場の人に根根掘り葉掘り詮索されるのは嫌ですよね。)仲が良くても話せない内容もありますし、調査で割り切った関係がベストです。
「報酬の代わりにギフトを用意する」
質の高い調査結果を得るためには(モニターに真剣に取り組んでもらうには)やはり報酬が必要です。
通常の定性調査なら最低5,000円以上の報酬をもらうことができますが、社内となると金銭の授受は難しいので、商品のサンプル等、ある程度調査のモチベーションになるものをお渡しすることを約束しておくと良いです。
また、お茶やお菓子等を用意しておくことで、積極的に取り組んでもらいつつ、リラックスした状態で回答してもらうこともできます。
定量調査(量的調査)
定量調査とは、仮説を量的に評価する調査で、商品コンセプトやターゲットの仮説が正しいのかを評価したいときや、既に購入している人の属性や購入経路等を知りたいときに、統計学的に分析することを目的とした調査になります。
商品の発売前から終息時まで、マーケティングしていくうえで常に指標となるのが定量調査の結果です。
ターゲットや訴求の根拠になるだけでなく、商品開発ネタにもなりますので非常に重要になります。
今回は、最もポピュラーで統計的に信頼性の高い、ネットリサーチに絞って説明します。
手法①:調査会社に依頼
十分なサンプル数を確保できる大手調査会社へ依頼しネットリサーチをするのが基本となります。
調査会社に依頼すれば、全体のスケジュール感や、目的に応じたサンプル数(調査規模)等を提示してくれますが、目的をしっかり伝えられないと無意味な調査になってしまいますし、割とシステマチックな分、内容等のきめ細やかなフォローがなかったりするので注意が必要です。
調査会社依頼調査の注意点はこちら
・設問や選択肢の内容は自分でしっかり確認する
・資料や画像は鮮明かつ視認性を担保する
「最初にしっかりと目的をインプットする」
調査会社の人は、調査のプロですが、基本的に業界の素人だと思った方が良いです。
定期的に同様の調査を依頼していれば、業界に精通している人もいますが、商品の特性を知り尽くしている人はいません。調査を任せすぎてしまうと、最終的に分析し直してもサンプル数が不足していたりで、欲しい結果を得られないこともありますので、目的は書き出して伝えておいた方が良いです。
「設問や選択肢の内容は自分でしっかり確認する」
ある程度決まった調査であれば、調査会社の方で提示してくれますが、フォーマット化されたものがすべて当てはまるとは限りません。既に認知されている商品と認知度の低いニッチな商品ではモニターの理解度が全然違いますし、誰でも理解できて答えやすい内容に調整しなければいけません。
可能であれば、一度経験者やコンサルへ調査設計を依頼し、同じ目的の調査であれば2回目以降はそれを調整するようにしてもいいと思います。
また、WEB画面に反映してみると、答えやすさや、常識的にありないことの排除ができなかったりというのが意外と発生したり、複雑にマトリクスを組んだり、スマホ画面で操作する上でのUIに課題がでてきたりがあるので、調査会社に任せきりにせず、自分の目で確かめ、可能であれば第三者に一度テスト画面で回答してもらう等もした方が良いです。
「資料や画像は鮮明かつ視認性を担保する」
調査の中で、商品のコンセプトシートや画像・広告動画を入れることがよくありますが、その際に解像度が低かったり、文字が読みにくかったりすると、誤った回答を招いたり、その後の設問へのモチベーションの低下につながります。
資料や画像はギリギリになることが多いですが、必ず調査実施前に画面上でテストしましょう。
手法②:社内(または身の周りの知人等)で実施
納期やコストを考慮したときに、どうしても調査会社に依頼できない場合は、社内や身の周りに声をかけて実施することも可能です。
社内(身の周り)調査の注意点はこちら
「社内会議や商談の用途に留める(マーケティングに使うほどの信頼性はない)」
Googleフォーム等、無料のリサーチツールを活用すれば、簡単に調査を打つことができるので、スピード感は抜群です。大手企業には社内リサーチツール等も設置されていることも多いです。
ただ、サンプル数が限られているということに加え、属性が偏ることが多いので、実際のマーケティングに活用するのは非常にリスキーなので、社内で通したい会議や商談時に、根拠としてデータを入れたいという程度の目的であれば、という程度になります。
まとめ
toCの商売をする上で、お客様のニーズを知るのは必須です。
確度を上げて商品開発~マーケティング施策を実行するためにも、最短ルートと思って調査を事前に実施することをオススメします。その際の手順も定性調査→定量調査でより確度を上げることができます。「急がば回れ」の言葉の通り、長く商品をヒットさせるためにも、事前に調査を実施することをお勧めします。
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